ふと長堀橋近くにあるBarの前を通り過ぎた時に思いついた小話
旅人が広陵とした大地を歩き続けていた。
「喉が渇いたなぁ、かれこれ飲まず食わずで3時間は歩いている。
どこかで水分だけでも補給しなければ・・」
そんな旅人の前に現れた大きな町。
そこの町の境界付近に一軒のバーがある。
同じ考えで旅人が立ち寄るのだろうかバーはとても賑わっているようだ。
バーに入りカウンターの気前のよさそうなマスターに向かう。
「マスター、私は一人で旅をしているんだが、お酒がドクターストップでね。
申し訳ないんだが水を一杯もらえないか?お金は払うよ。」
旅人はこう尋ねたが、マスターはこう返した。
「お客さん、悪いんだが、うちじゃあ水は出してねぇんだ。
他の客は飲んだくれの地元連中か、酒飲みの旅人しかこねえってのもあるがね。
ミルクならあるよ。ここは乳牛の生産が盛んな町だからミルクは格安だ。」
ミルクがあって水がないというのはいささか不思議に思ったが
旅人は水分補給が出来るならと迷わずミルクを注文した。
旅人はマスターにきいた。
「マスター、何でミルクはあるのに水は飲ませないんだい?」
マスターはこう答えた。
「この辺り一体は水を浄水する施設がよく無くて、飲料水には使えねぇんだよ。
その点牛は俺達人間みたいに水の味がどうこう気にせずガブガブ飲みやがる。
せっかくの資源だし、俺達人間が飲まないで汚しちまうくらいなら
牛に飲んでもらってその牛からもらうミルクを飲もうってことになってんだ。
水も飲めない人間ってやつはつくづく贅沢者になっちまったんだなぁ。」
旅人はその話を聞きとても複雑な気持ちになった。
しかしミルクはとても美味しかった。
おわり
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